| 心療内科・神経科・精神科 |
セルフ・モニタリング |
はじめに、ご自分の生活や行動を「週間活動記録表」に記録して客観的に観察しましょう。活動内容と気分を点数化(0-100点)して記入します。これは「セルフ・モニタリング」と言われる、行動療法の一つです。どなたも手帳に将来の予定は書き込むものの、過去の出来事はあまり書かないと思います。しかし、これを行うと、様々な事柄に気づくことができるのです。
日記のように、心の内側を記す必要は必ずしもなく、客観的に生活や行動を記録していただくのみで構いません。もちろん、不安や葛藤などを書き出して、整理すると、より効果的です。
【ケース、38歳、男性、会社員】
対象となる症状
以下のチェックリストに従い、1週間の生活を振り返ってみましょう。
「早寝早起き」できましたか?
睡眠は6時間以上取りましたか?
食事は一日3回取りましたか?
お酒や煙草は控えられましたか?
満足なお仕事はできましたか?
充実した余暇を過ごせましたか?
何か問題は生じませんでしたか?
効果的な対処はできましたか?
自分の生活や行動、そして思考・感情などを客観的に振り返ることが大事です。日常の忙しさや慌ただしさに巻き込まれ、自分を見失い、結果、心身の不調や周囲とのトラブルを生じてから現実に直面しがちになります。従って、その前に、1日1回、週1回、そして年1回、冷静に自分を見直すことが必要です。 |
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ストレス・コーピング |
次に、記録から発見された問題と対処行動を列挙し、ご自分の「ストレス・コーピング(ストレスへの対処行動)」をチェックしましょう。
【ケース、22歳、女性、大学生】
不安や抑うつは適切なコーピングにより改善することが認められています。特に不安に関しては以下のように説明されています。
不安=危険/対処+援助
この式のように、危険があっても、対処や援助が十分に備われば、不安は小さくなるわけです。コーピングは以下のように分類されます。

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コーピングには上記のように健全なものもあれば、病的なものもあります。病的なものとしては、過食・嘔吐、リストカット、大量服薬といった自傷行為、暴言・暴力といった他害行為などがあります。病的な対処行動は避けるべきで、より健康的・成長的な思考・行動を身につけましょう。 |
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問題解決療法 |
最も積極的・効果的な対処方法は「問題解決」です。
そこで、これを治療的に援用した「問題解決療法」をご紹介いたします。具体的に以下の手順に従って進めます。

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1.問題の提起
まず問題を知覚することからはじまります。これは「問題への感受性」とも言い、自分や周囲の問題を積極的に気づくことで得られます。その際は「自分だけの思い込み」といった認知のゆがみ(後述)を排除する必要もあります。更に問題を解決することに、積極的・挑戦的になる態度も求められます。従って、ある程度の精神的な健康さ、不安や抑うつの改善が前提になります。
2.明確化・定式化
問題が明らかになれば、それは半ば解決したといっても過言ではありません。しかし実際に、問題は曖昧・混沌としていて、なかなか分かりません。そこで、情報を集める、問題の本質を明らかにする、目標を設定する、問題を解決する意義を再評価する、ことが必要です。そのためには、集められた情報を、分かりやすい言葉で、具体的に、正確に書き出してまとめることが有用です。可能ならば、図や表にしてみるとより理解しやすいでしょう。
3.代替可能な解決策の産出
問題に対し、できるだけたくさんの選択肢を考え、より良い解決策を得ることを目指します。それには「拡散的思考」(Guilford)や、「ブレイン・ストーミング」(Osborn) を用います。これは「頭の中に嵐を巻き起こす」という名称の通り、固定観念にとらわれず、様々なアイデアをいくつも考え出すことです。この際、質よりも量 が重要で、それらを分類したり、組み合わせたりすることにより、更なるアイデアを考え出すことができます。そして、意思決定するまでは、批判や評価を避 け、自由な雰囲気の中で行うことにより、多くの解決策を考え出せることができます。
4.意思決定
代替思考により得られた選択肢から最善の解決策を決めます。そのためには、それぞれのメリット・デメリットを十分に検討します。基準は、問題を解決できる見込み、期待される心理的安定、要する時間や労力、自分や周囲への影響、などです。それには「収束的思考」が求められます。拡散的思考で得られたいくつものアイデアを、内容や時間の流れによりまとめ、より良いアイデアへ至るよう努めます。これらのアイデアも図や表にすると容易にまとめることができます。
5.実施と検証
選択された解決策を実施し、結果を検証します。特に仕事や生活における「有効性」や「実用性」に注目いたします。そのためには結果を客観的・具体的に観察・記録すると効果的です。回数や時間、金額など数値化するとより良いでしょう。
【ケース、28歳、会社員】
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認知療法 |
残念ながら、問題解決が根本的に不可能な時には、現実に対する受け止め方を変えることが必要です。「認知療法」は認知(物の見方や出来事の受け止め方)を改善することにより、不快な気分を和らげ、心身の健康を得るための治療法です。気分は以下のように認知や行動・身体と相互に影響しあいます。

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辛くなった時に頭に浮かぶ考えやイメージ「自動思考」を現実に沿った柔軟な考え方に変えていきます。そして、「自動思考」を生み出すもとになっている考え方のクセ「スキーマ」にも気づき、これも修正できるよう働きかけていきます。しかし、不安や抑うつに陥りやすい方は非適応的なスキーマ、いわゆる「認知のゆがみ」を生じがちです。

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1.根拠のない決めつけ
証拠が少ないままに思いつきを信じ込むこと
2.白黒思考
灰色(あいまいな状態)に耐えられず、ものごと全て白か黒かという、極端な考え方で割り切ろうとすること
3.部分的焦点づけ
自分が着目していることだけに目を向け、短絡的に結論づけること
4.過大評価・過小評価
自分が関心のあることは拡大して捉え、反対に自分の考えや予想に合わない部分はことさらに小さく見ること
5.「べき」思考
「こうあるべきだ」「あのようにすべきでなかった」と過去のことをあれこれ思い出して悔やんだり、自分の行動を自分で制限して自分を責めたりすること
6.極端な一般化
少数の事実を取り上げ、全てのことが同様の結果になるだろうと結論づけること
7.自己関連づけ
何か悪いことが起こると、自分のせいで起こったのだと自分を責めてしまうこと
8.情緒的な理由づけ
その時の自分の感情に基づいて、現実を判断してしまうこと
9.自分で実現してしまう予言
自分で否定的予測を立てて自分の行動を制限してしまい、自分の行動を制限するものだから、予測どおり失敗してしまう。その結果、否定的な予測をますます信じ込み、悪循環に陥ること
このような否定的な認知のゆがみを自覚して、適応的な思考へ至るために以下のような「コラム法」を用います。それぞれのコラムにご自分の状況や思考の変化を書き込んでいくことで、より現実に適応した思考へ至ることができます。
【ケース1:29歳、女性、会社員】
【ケース2:33歳、男性、会社員】
以上、セルフ・モニタリング、コーピング、問題解決療法、認知療法について概説いたしました。いずれも、ご自分の生活や行動・思考などを客観的に観察して、より現実に適応し た対処・方法を模索する試みです。と言いましても、なかなか一人で行うのは困難でしょう。特に、不安感や抑うつ気分の強い時は、論理的・理性的な思考をし づらいものです。銀座泰明クリニックでは、必要に応じ、これらの心理的な治療を皆様とご一緒に行ってまいります。詳しくは主治医とご相談ください。どうぞ 宜しくお願い致します。
より詳しい内容を知りたい方は、以下の書籍等をご参照ください。
「精神科地域ケアの新展開‐OTPの理論と実践」
水野雅文・村上雅昭・佐久間啓編、星和書店
「うつ・不安に効く7つのステップ」
大野裕 大和書房 |
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